食料自給率問題問題

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     以前子供の宿題でこんなのが出た。

    「日本の食料自給率はなんと40%未満!このままだと何かあった時食べるものが不足してしまいます。食料自給率を上げるためにどうしたらよいのか、みなさんなりに考えてきてください」

    めし関連の本と読んでるとたまに出てくる食料自給率問題。小麦粉も大豆も肉類(餌が外国産だから)も外国産のため、我が国の食料自給率は先進国の中でもワーストクラスでひどい。このままだと万一の時ご飯が食べられなくなるからみんなでなんとかしよう、というアレ。

    食料自給率という指針は百歩譲って分からなくもない。人口一億三千万人を抱える先進国日本は、その胃袋を国内の土地だけで賄うにはちょっと狭い。さらに経済発展も相まって、相対的に食料自給率が下がってしかるべきというのは、専門家じゃなくてもなんとなく理解できる。なので「そういうバランスがあります」という客観的な指標として扱うだけなら、なんの疑問も生まれない。

    だけど、この食料自給率に「問題」をつけて、さも国民にかせられた課題のように教育するからよく分からない。

    農水省食料自給率問題の論法をまとめると、こうだ。

    ■世界の食べ物が危ない!
    広がる砂漠、増え続ける人口、減らない飢餓、このままだといつか地球から食べ物がなくなってしまいます。もちろん日本も例外ではありません。なぜなら、日本は食料の60%を輸入で賄っているのですから、という理論。

    ■食卓から外国産を取り除くと、あらら、こんなに減っちゃった。の図。
    一般的な献立のイラストが2枚用意されている。1枚目は通常、2枚目にはその献立から自給率のパーセント分にカットして描かれる。パンや肉はほとんど消えてしまい、味噌汁からは汁と豆腐が消え、わかめだけが残る。相変わらず自給率が高いコメのめしと、これまた100%で残ったほうれんそうのおひたしが質素感を煽る。自給率40%を実感するには、直感的で分かりやすい。

    ■このままだと日本人は飢えてしまいます。
    もし、食べ物がまったく輸入されなくなったら、今の日本人は食べ物が半分以下になってしまう。将来訪れるかもしれない食糧危機を乗り越えるには、自分の国の食べ物は自分の国で作るべき。という考え方。世界の先進国の自給率を引き合いにして、事態がいかに深刻か煽るが、そもそも海外に食料自給率という考え方はないから、農水省の自作自演という事実が悲しい。

    ■自給率を上げるにはどうしたらよいか
    自分でできる自給率向上アクションとして、魚食や地産地消をクローズアップ。給食を残さず食べるとかす好き嫌いしないで野菜を食べようとか、論点がずれてるのはまだいいとして、積極的に和食(味噌汁や豆腐)を食べようって、むしろ悪化するのでは?と思われる取組みとかをガンガン推奨してくる。いずれの取り組みも食育の観点ではよいと思うが、食料自給率問題との因果関係がとにかく怪しい。


    食料自給率は数字のトリック

    食料自給率問題を取り上げたあるキッズサイトで、質問者が「なんで食べ残しをやめると食料自給率が上がるの?」という問に対して「食べ残しを減らして、1日の食べものの量を必要な分だけにすれば、食料自給率の計算式が変わるからだよ。カロリーベースの食料自給率の計算式は、「1人1日当たりの国産供給熱量/1人1日当たりの供給熱量」です。食べ残しを減らすと、1人1日当たりの供給熱量が減るだろうと考えられています。)」と回答している。その根拠は?の疑問は置いといて、問題はこの指針が「分母が小さくなればパーセントが上がる仕組」という数字のトリックであることを堂々露呈してしまっているのは、子供だましにしても程度が低すぎる。

    ちなみにこのサイトの「作ってみよう」のコーナーで紹介されているレシピは、シチューとロールキャベツ。いずれも外国産食材を避けられない西洋料理。最後には「お好みでケチャップをかけてもおいしいわよ!」って、馬鹿にするにも程がある。

    そもそも食料自給率は供給熱量に対する国産供給熱量のパーセンテージだから、数値を100%に近づけるのは簡単。単純に輸入をやめればいい。現に発展途上国や外交がうまくいってない国の自給率はとても高い。高いが貧困だ。大切なのは、国民1人あたりの国産供給熱量の絶対数だ。割合じゃあない。


    なぜカロリーベース?


    食料自給率の指針は、実は2種類の計算方法がある。カロリーベースの計算式と生産額ベースの計算式だ。先のキッズサイトでは、カロリーベースの自給率を39%、生産額ベースの自給率を66%としているが、「※これから先は、カロリーベース食料自給率を「食料自給率」として使用しています。」の注釈に対する説明がなされていない。66%という数字は、総消費額14.5兆円のうち実に9.6兆円を国内で生産しているという、国土のわりには快挙的な数値であるにもかかわらず、最初に1度登場するだけで以後一度も出てこない。これにも農水省の魂胆がありそうだ。
    かつて農水省は農業従事者に対し積極的な減反を呼びかけた。米の価格を下げないために、作る量を減らすわけだ。一見農家への救済処置と見て取れるが、米の価格が下がって一番困るのは農協だから自衛策に他ならない。一方で輸入穀類は増加している。多くは畜産の飼料だが、これにも理由がある。海外産の安い飼料は国内畜産業を支えるために必須の輸入品だ。肉の価格は、飼料が高騰して上がることがあっても、飼料が安くなって下がることはない。
    ところが、カロリーベースの計算式は、この国産食肉を「輸入品扱い」している。飼料が外国産だからだ。当然、酪農家の飼育コストなんか関与されない。

    なぜそこまでカロリーベースにこだわるか。それは、数字が「低い」ほうが、都合がいいから。ではなぜ数字が低いと都合がいいのか、誰に都合がいいのか。誰得なのか。それはもうちょっとあとに書く。


    外食産業が壊滅すれば、食料自給率は簡単に上がる。


    正直、いくら社会の授業で小学生に地産地消を促しても、食料自給率は上がらない。流通の多くは大手食品メーカーや外食産業が担っているからだ。逆に言えば、これらが一斉に輸入品の使用をやめれば、食料自給率は飛躍的に上がる。上がるだろうが、当然企業はやっていけない。食品産業から見れば、どんな理由にせよ、食料自給率が上がればそれは経営への悪影響を意味する。


    国防を人質にした、アメリカの経済圧力

    もうひとつ、食料自給率が上がらない大きな理由は、日本経済のイニシアチブをアメリカが握っているから。アメリカからすれば日本は戦後パンと牛乳で一生懸命飼いならしてきた大手輸出相手国だ。かつて肉牛や米の自由化、昨今はTPPなどでアメリカに有利な協定を結ぼうと圧力をかけ続けている。そして日本はそれを拒めない。なぜなら、国防という人質をとられているから。隣国にピーキーなお国様が多い日本は、国内の防衛システムではちょっとばかり頼りない。仕方ないから、相変わらず日本を駐屯地扱いするアメリカに対して、ついでに国防もお願いね、テヘ!っと愛想よくしておくしかない。もし食料自給率が50%を越えようものなら、どこからミサイルが飛んでくるかわかったもんじゃないし、万一外交が一切ストップしたら、食料の問題だけじゃすまされない。


    結局食料自給率とはなんなのか


    つまるところ、食料自給率は、一般消費者ごときがなにをがんばっても絶対に上がらない数字。むしろ、上がっては困ることのほうが多い数字なのだ。ほとんどの人には無意味な数字。ところが、一部の人は、この数字のおかげで大変な得をしているかもしれない。


    食料自給率問題は、
    大手広告代理店と農水省がタッグで創りだした
    営利目的のキャンペーン

    血税をキャンペーンにつぎ込んだ農水省の小遣い稼ぎは、広告代理店にとってはオイシイエモノ。危険を煽って国民の注意を引くのと、社会貢献をうたって消費行動に誘導するのはオテノモノ。事実農水省の食料自給率対策センターは電◯内にあるというのだから疑いようがない。つまり食料自給率とは、一部の組織が儲けるために、全く関連がない2つのデータがあたかも因果関係にあるように見せかけて消費の動機にするという、マーケティングのトリックだ。それもかなり悪質な。だいたい、いちばん食料自給率に貢献しそうな、外食産業や大手食品メーカーバッシングを一切しない点で一貫性がある。これらはすべて大切なお得意様だからね。

    結局、食料自給率ってのは、バレンタインのチョコレートやクリスマスのチキンと同じだったというわけ。まあ、そういう意味では平和の象徴といえるかもしれないけど。いすれにしても、小学校の社会の授業で真剣に語り合うテーマにするべきでないね。



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