食べてはいけない

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    ネーミングからは、よくありがちな危険食品啓蒙系の内容を想像したが、全く違った。「インドにポークカレーはあるか?」本書は宗教上の理由、あるいは倫理道徳的な理由で、食べなかったり食べることを戒めた人々やその文化、いわゆる「食のタブー」をテーマにしている。
    食のタブーというと、とりわけ注目を浴びる豚。雑食性で、野菜だろうが穀物だろうが肉だろうが排泄物だろうがなんでも食う豚は、それだけで汚穢の対象になりえそうだが、頭のいい人が感染症などから民を守るために戒めを広めたとしたら面白い。

    そういえばおでんに入っているがんもは、元をたどれば精進料理「雁もどき」だ。殺生を禁じた仏教には、もどき料理がたくさんある。湯葉やこんにゃく、きのこの類を使って、獣肉や海鮮を模した料理が数多い。最近は台湾でもどき料理が流行っていると、ラジオで言っていた。

    面白いのは、食べない理由にも「途中から食べるのをやめた」パターンと「最初から食べ物とみなしていない」パターンがあるということ。もどき料理の発想者は、確実に本物を口にしているのに対し、ヒンズー教はそもそも牛の味を知らない。

    食 う、ということは、他の生命を確実に奪う。宗教的な縛りはなくともその行為自体に強い嫌悪感をもつ人々は大勢いる。「かわいそう」の心理だ。難しいのは、 命の線引をどこでするか。食べるために殺していいのは植物だけか、意識や感情の少ない魚までか、それとも、微生物含めあらゆる生命について、人間にそれら の命を奪う権利などないのか。主張が交錯する。果物だけを食し、虫すら踏まぬように歩く厳格なジャイナ教徒は、普段飲む水を顕微鏡で見せられてしまい、以 後何も飲み食いすることなく死んだそうだ。

    フォアグラやリアルファーを嫌がる人、カンガルーを害獣として殺しながら反捕鯨を訴える人、動 物実験をする科学者に爆弾テロをしかける人、会食中に屠殺場の写真を出して、客の食欲を萎えさせるナチスの独裁者。みなそれが正義と疑わない。もちろん、 すべての生命に感謝しながら、おいしくいただく人もだ。そしてみんな人間らしい。


    最近デパートでベジミートというやつを見かけ た。これも台湾産だ。大豆グルテンを主原料にした、いわゆる「もどき食材」だ。以前豆腐の唐揚げというのが珍しかったので買って食ったが、重ねた油揚げの ような食感で(そんな状態の油揚げ食ったことないが)まあまあうまかった。肉に似てなくもない。しかし、デパートで見たこれは、パッケージも中身もまるで ペットフードのようで、食欲はあまりそそらない。機会があれば食べてみたい。


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